最近登った山・・・針目山


2004年10月5日








 針目山もこの本を見て登りました。









林道針目線への入り口が分り辛かったのですが、そこはオジさんの持って生まれた勘の良さで探し出しました。(工業団地の広い造成地を右に見て直角に左折)



 この林道針目線・終点に到着する迄も先日からの台風で傾いた樹が放置して有り、

 その下を車の屋根がつかえないかを確認しながらゆっくりと15分ほど進んで来ました。


 舗装道路の終点部分に少し広くなった所が有り、そこに駐車しました。


 他に車は無く、今日もこの山は貸切りである事が分かりました。





身支度をして砂利道の林道を歩き始めると、途中に樹や竹が台風でかなり倒れています。

そして15分程歩いた砂利道の終点にも駐車スペースが有りました。

そこから直角に左に曲がると本格的な山道になっていき、やがて雑草がかなり茂った所が段々多くなってきます。

そして道が細くなってくると、クモの巣がやたらに多くなってきました。

最近この道を誰も通っていない証です。



ストックをグルグル回したり、左右からケサ切りにしてクモの巣を払い落としながら、赤胴鈴之助(古すぎる!)になった気分で進んで行きました。

中途半端にクモの巣を壊すと敵は短時間で修復を終え、私達が下山するまでに元の状態に戻すのではないか?と思い、

敵の修復に時間が掛かる様にかなり徹底して破壊しながら進んで行きます。

よそ見等をして進むと時々見落とし、顔からクモの巣に突っ込んでしまいます。

慣れているとは言え、ベチャーとした感触はやはり気持ちが悪いものです。

私のストックはもうクモの糸がグルグル巻きの状態になっていました。


そんな事を繰り返しながら10分ほど進んでいる内に、今までより少し雑草が深く、左右からススキが倒れかかっている所に差し掛かかりました。

これまでの様にオジさんはストックを左右に振り払い、雑草をなぎ倒したり分けたりして道を作りながら進んで行きました。

そしてその草むらに二、三歩足を踏み入れた時に、2m位先で蛇がサーッと右の草むらに逃げ込むのが目の隅で確認できました。



そんな事は今迄に何度ともなく経験していますので 『蛇がいたのかー!』 と思いながら更に歩を進めようとしたその時に1.5m位先で又蛇が目に飛び込んで来ました。

そしてその蛇は鎌首をもたげたまま、オジさんに向かってスーと近付いて来るのです。

しかも銭形の斑点模様が見て取れました。

『ワァ〜!ワァ〜!ワァ〜!』 と言ったかどうか?覚えていませんが、慌てて後ろに逃げました。 落ち着いて速やかに後退しました。

オバさんも一緒に後ろの方に走りました。

20m位走って後退し、そこで息を整えました。



オバさんは何があったのかまだ知らない筈なのに、既に顔が引きつっています。

事情を話し、握りこぶし大の石ころを二人で50個ぐらい集めました。

そして、10m位離れた所から蛇のいた草むらに向かって二人で、一斉射撃と言うか、じゅうたん爆撃と言うか、とにかく石ころを雨アラレのごとく投げまくってやりました。

全て投げ終わると、オバさんが 『モーいいんじゃないの?!』 と言われました。



オバさんは偉いのです。

我が家の三権の長であり、その上、軍隊(兵隊はオジさん一人)の司令官でもあるのです。

絶対的な権力者なのです。

その司令官殿のお言葉ですから、(座頭市が腰を引いて杖を突いて歩く状態で)オジさんは コワゴワ 平気でストックで草むらを叩きながら草むらに進入しました。

その瞬間に先程の蛇が右の草むらにサーッと逃げ込むのが目に入ったのです。



あの蛇はあれ程の石ころ爆弾の中でも身をかわしながら、逃げずに待っていたのです。

オジさんは今、あの蛇達はランデブー中であったに違いないと思っています。

先に逃げたのが彼女で、待ち伏せしていたのが青年蛇ではないか?と思っています。

青年蛇は大変な苦労の末にやっと彼女を口説き落としてデートに漕ぎ着けたのに、そこをごましお夫婦が邪魔をしたのであります。

『今までの苦労はどうなる!』 と青年蛇は怒り狂い、前後の見境も分からない程逆上して待ち伏せしていたのだと思います。



それで爆弾攻撃にも逃げずにじっと耐え、一矢報いんものと待ち伏せしていたのだと思っています。

しかし蛇の興奮が治まって冷静になり、オジさんの勇姿を目の当たりにして 『これは到底、自分が敵う相手ではない』 と悟り、やっと逃げ出したに違いないと思っています。



敵も人を見る目が有り、そのお陰で無用な怪我をせずに済み、敵ながらアッパレであると思います。

そしてあの青年蛇は近い将来きっとこの山一帯を治める立派な大将蛇になるに違いない!とも思いました。

それから青年蛇の逃げた方向を見ながら、『彼女には人間をコテンパンにやっつけてやったと言っておきなさい、

                            そして今度デートする時には人が通らない静かな所を選ぶのだよ』 とアドバイスを送ってやりました。

その他にも 『今後の健闘を祈る!』 とか、『君が立派に成長した時に又合おう!』 等と肝っ玉の大きい所を見せながら私はそこを通り過ぎました。

そして司令官殿に合図を送ると、司令官殿は小走りでそこを通り過ごされました。



それでそのまま前に進もうとすると司令官殿が、『帰りもここを通らなくてはいけない、待ち伏せされるかも知れない』 と言われます。

『そう言われればそうだなー!』 と思い、また同じ様な草むらがあちこちに沢山有るので、他の草むらと判別する為に石ころを集めておこうと言う事で意見が一致しました。

それで、また握りこぶし大以上の石ころを50個ばかり集め、帰りにその現場がすぐ分かる様に道の中央にケルン状に積んでから進みました。


そしてそこからしばらく行くと、山道の両サイドが背丈以上のススキとか雑草が生い茂った所に差し掛かりました。

その中をしばらく進んでいると突然、左横の4〜5m離れた場所で、『ザァザァザァザァーーー』 と言う大きな音と共にススキ等が大きく揺れました。

『何だ?!』 と思わず立ち止まりました。

オジさんはその場にたたずみ、状況判断をしようとしました。

しかしその後は静かになったままなので、気を取り直して前に進み始めました。



そうすると、それと同時に又すぐ左横で大きな音がして、ススキ等が大きく揺れました。

そしてそれは私達の進行方向と同じ方向に進んでいます。

オジさんの心臓も、『ドッキン、ドッキン』 と波打ってきました。

司令官殿の顔はすでに引きつっています。

しかし又静かになりました。

敵もこちらの出方を伺っているのか、しわぶき一つも上げません。

不気味な静けさです。

両すくみの状態です。

オジさんはこの窮地を打開すべく、敵の正体は?(猪に決まっている!)、敵の数は?(音の最後が急にピタッと止み、ザワ尽きが無いので一頭とみた!)、

子連れか?(これが一番恐いのですが、もしそうであれば母性本能により最初の行動で攻撃して来る筈である!)、

以上の事をオジさんは最近くたびれ掛かっている脳ミソを久しぶりにフル回転させて一瞬の内に判断しました。

敵は脅えて隠れている!・・・と。



敵の状態が分かったのでオジさんの鼓動は治まり、敵の捨て身の不意打ちに備えてストックを逆に持って上段の構えで身構えました。

(ストックにあんなに付いていたクモの糸は、雑草等をなぎ倒している内に綺麗に取れていました)

そうして構えている内に、その静けさを破って司令官殿が唐突に、『帰えろー!』 と言われました。

オジさんが身構えたままで黙っていると、再度 『恐いから、帰えろー!』 と申されました。

オジさんはもう恐くも何とも無かったのですが、基本的に競争を好まず、博愛主義者で無益な殺生をしたくないオジさんは、

敵に隙を見せずに、『フーッ』 と肩の力を抜き、ストックを静かに下ろしました。

そして司令官殿が2度までも命令を下されるものですから渡りに船とばかりに、渋々その命令に従う事にしました。



二等兵と言うか奴隷の様な存在のオジさんはここで司令官殿の命令に反すれば、早速今晩の酒のつまみや

引いては今後の食生活及び諸待遇にも影響が生じると一瞬にして読み切り、『後方へ前進』 の命令を受け入れる事にしました。

その場を離れる前に行く手を見れば目指す山頂はまだ見えず、登山道には草が生い茂り、どこを歩けば良いか判別出来ない様な状況でした。



 オジさんが恐くもナーンとも無く冷静だった証拠が、後退前に敵に隙を見せずに撮った前方のこの写真です。


 残念ながら写真に写っていませんが、4〜5m先の左側にはオスライオン程もある大きな青年猪が、オジさんの一分の

 隙も無い勇姿を草むらから垣間見て恐れ、身をガタガタと震わせながらうずくまっている筈であります。


 出て来ないため、写真に撮れずに残念です。





そう言う事で、今来た道を帰る事になりました。

そしてほんの先程作ったケルンに戻り、草むらと蛇が逃げた方向に又爆弾攻撃を行ってから、今度はオマケとして頭より大きな石をドーンと放り投げてやり、

仕上げにストックを叩き付けながらそこを通り過ぎました。

その後に司令官殿は例のごとく、そこを小走りで通られました。

そして安全地帯まで戻り二人とも、『フ〜〜ッ!』 と大きなため息をつきました。

そして歩きながら、『誰も登らないこんな無名山は蛇が冬眠して草が枯れ、道が分かる様になる冬に登らなくてはいけないなー!』 等と話しながらリベンジを誓い合い、

下山したのでありました。

以上が針目山への第1回チャレンジの顛末です。


ごましお夫婦は今までに何百回となく山に登ってきましたが、今回の様な撤退の仕方は初めてでした。

事の表現の仕方はさて置き、出来事自体は忠実に伝えた積もりです。

これから山登りを始めようと思っている方が偶然にこの文を読み、『そんなに危険ならば山には行かない!』 等と思わないで下さい。

今回の事は殆んど誰も登らない山ですので、道の整備等が良くされていない為に生じたのです。

前記の様に何百回ともなく山に登っている私達でさえ初めての経験ですので、整備された山ではこの様な事は交通事故に遭う確率よりずっと少ないと思います。

それより山にはそんな事に何倍も何十倍も勝る、素晴らしい出会いと感動が待っています。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ それらは山に行けば分かります。

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