植木鉢の中の苔達      2004年11月

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鉢植えの植木が30本程あります。現在、その地表は深い緑色の苔で全て覆われ、土はまったく見えません。

その苔はオジさんがずっと前に色々な山で 『綺麗だなー!』 と思った所の苔の隅部分を少しづつ持ち帰り、植木の地面に移植したものです。

その苔達を移植する前に土中に虫等が居るといけないと思い、殺虫液の中に一晩浸してから移植しました。

その後はクコの様に手入れも何もせずに、放ったらかしたままでした。



各植木鉢の苔達は最初はぽつん・ぽつんと、マバラだったのですが、いつの間にか私に気付かれない様にこっそりと自己増殖し、今は凄い密度になっています。

そして今はどの植木鉢の苔も皆同じ物の様に見えますが、一つの植木鉢には方々の山の違った品種の苔がある筈なのです。

移植した当時は色とか背丈とか表面が微妙に違い、一見しただけで品種の違いが分かりました。

それが現在はどの植木鉢の苔も全部、同じ種類に見えるのです。

中には杉苔と呼ばれ、表面が杉の葉に少し似ていて背丈の高い品種もありましたが、それはどの植木鉢を見渡しても今は全く見つかりません。



オジさんが思うに、それぞれの苔が自己増殖していく過程で、違う品種の苔と衝突した時にもの凄い戦いが起きたのです。

その違った品種の衝突部分ではオジさんの想像を絶する様な、凄惨な戦いが幾度となく繰り返されたと思います。

苔達には知性も教養も理性も何もありません。 あるのは種の保存と言う本能?だけではないかと思います。

ですから、相手を殺るか殺られるかだけの戦いで、途中で劣勢になっても逃げる術もなく、片方の品種は絶滅したのではないかと思っています。

そう言う戦いが日夜、オジさんが管理している庭の中で、オジさんには事前に一言の相談もなく、オジさんの知らない間に勝手に繰り返されていたのです。

そんな戦いは平和主義者であるオジさんは断じて許しません。

即刻、戦いを止めなさい!! ・・・  ・・  ・  ・    ・ 』




しかし、全部の苔が同じ種類に見えるという事は、もう乱世は終わり、今は治世なのかも知れません。

日本の歴史で言えば戦国時代は終わり、徳川時代なのかも知れません。



しかしオジさんは先刻、苔達に戦いを直ちに止めるようにと、大きな声を出して偉そうな事を言いました。

ようやく興奮が収まり、冷静になった今、よく考えてみればそれぞれ平和に暮らしていた苔達にそのような惨い戦いをさせる原因を作ったのはオジさんであります。

それを知った今は非常に反省しています。(・・・もうしません!)



そう言う事で苔達の戦いにも決着が付き、勝ち残った苔の中には勢い余って植木鉢の外のペナルティエリアにまで進出しようとする、向こう見ずな若い苔達もいます。

そんな苔をオジさんが見つけると、その都度その苔の頭をコツンと叩いてやります。

何度も頭を叩かれて苔はやっと学習したらしく、この頃は植木鉢の外へではなく、植木の幹に進出を始めています。

これは、オジさんも容認しています。



と、ここまで書いて先程、苔には知性も教養も・・・ と、書いたのを思い出しました。

苔はバカではないのです。

この矛盾点に気付きましたが、書き直すのは大変なので書き直したりせずに、ここで終わりたいと思います。

植木鉢の中の苔達

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