ク コ       2004年11月


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去年(平成15年)の11月に熊本県の山に登り、下山中に川原を歩いている時です。土手でクコらしき植物を見つけました。

実が生っていれば直ぐ分かるのですが実は有りません。 葉や茎の形や色、大きさ、背丈等も図鑑等で見て記憶しているクコに良く似ています。

実はクコもサルナシと共に私はもう5〜6年も前から探しているのです。



人家はそこから300mも行った所に有るのは知っていました。

往路にその家の前を通る時にお婆さんが庭先で干し柿の手入れをしているのを見かけ、登山道の状況を確かめたりして少し会話もしていました。

私はそのクコとおぼしき物の枝先を30cm程折り、それをそのお婆さんに見せて確認し、クコであれば又川原に引き返してもっと多く採取しようと思っていました。



しかし庭先には誰も出てなく、玄関や縁側の戸も締め切られて人の気配が無く、留守の様です。

しかたなく、そのまま歩いていくと幼稚園児ぐらいの男の子が、庭で一人で三輪車に乗って遊んでいるのが見えました。

私はその子に 『ボクー、お母さん居るー?』 と聞くと、その子が 『ウン、居るよー』 と答えましたので、『この枝がクコがどうか聞いてきてくれるー』 と言いました。

その子は 『ウン、いいよー』 と答え、枝を持ち、走って家の中に入りました。



そして1分も待たない内に出てきて 『これはクコじゃないよー』 と言います。

『それじゃ何だい?』 と聞くと、待ってましたとばかりに 『ムラサキショーマだよー』 と得意げに答えます。

『ヘー、ムラサキショーマって言うのかー』 とその子と話している内に家の中から、まだ二十代と思える若いお母さんが出てきました。

そのお母さんに事情を話している内に、更に家の中から私達と同年代でお姑さんとおぼしき人も出て来て、話に加わりました。

話している内にそのお姑さんとおぼしき人が 『ちょっと待ってて下さい』 と言って家の裏の方に消え、すぐに30cm位の枝先を持って来ました。

そして 『これがクコですよ、帰ってから直ぐに1〜2時間水揚げしてから地面に差し込んで於けば、クコはとても生命力が強いから育ちますよ!』 と言ってクコを私に渡してくれました。

私達は丁重にお礼を言って、その家を後にしました。



そこから自宅に帰り着くまでに2時間以上掛かる場所でしたので、その間にクコが弱るのではないかと思うと家に着くまで待てず、

車内にあった容器に水を入れてクコの茎を水に漬けたまま、普段より少しだけスピードを出して家に帰り、直ぐに植木鉢に植えました。


その後、私は毎日の様にそれを観察していましたが、葉は直ぐに枯れて落ち、茎だけになってしまいました。

クコの茎の色は貰った時から枯れた様な薄い茶色でしたので、生きているのか死んでいるのか判別出来ません。

そしてそのままの状態で冬を越し、暖かくなり掛けても何の変わりもありませんので 『ダメだったなー、何がいけなかったのかなー』 等と考えながら、捨てようと思っていました。

しかし捨てる機会が無く、しばらくそのままにしていました。



ある日、何気なくクコに近づくと茎の節の様な所に何か小さな緑色の物が見えました。 1〜2mm位の大きさなので、更に顔を近づけて見ました。

その途端、最近はすっかりだらけている脳ミソに 『ビリビリッー』 と電流が走り、シャキッとなりました。

機敏な動作で部屋に入り、1番大きな虫メガネを持ってきてそれを観察しました。

虫メガネで良く見るとその緑は新芽だったのです。



更に良く見ると他の5、6ヶ所でも可愛らしい新芽が出ているではありませんか。

私は 『ヤッター!』 と歓喜しながら、直ぐにオバさんを 『オーイ』 と呼びました。 返事が無いのでもう一回 『オーイ』 と呼びました。

そうするとオバさんが 『忙しいのに何よー、用事のある人が来ればいいでしょー!』 と、いつもの様にニクタレ口を利きながらやって来ました。

近頃はまったく可愛げが無いのです。 しかし、そこの処はグッと腹に飲み込みました。

そして 『クコから新芽が出てる、死んでなかった!』 と言うと、オバさんはオジさんから虫メガネを取り上げ、観察を始めました。

そして 『生きてたのねー 良かったねー♪』 とオバさんも喜んでいます。 純粋で淳な人なのです。 オバさんもクコの事を気に掛けていたのです。

そう言う事でクコはごましお夫婦からとても大事に扱われる様になりました。


それから、毎日の様に二人で水をやりながら観察を続けて驚きました。 その後のクコはとても生長が速いのです。

もう7ヶ月以上も前になりますので今思い起こしても小さな事までは良く思い出せませんが、とにかく生長が速くアッと言う間に大きくなりました。

あんなに小さかった新芽が毎日グングン伸びて茎や葉になり、それから又新しい茎や葉が次々に出て来ます。

著しい時は一日に10cm位伸びていた様に思います。

それで、家にある一番大きな植木鉢にクコを植え替える事にしました。

そして園芸店から支柱を買って来たのですが、高さが足らなかったので山に登った時に2m位の高さの笹竹を6本ほど切って来て、園芸店からの支柱を補強しながら継ぎ足しました。

その後もクコはグングン生長を続けて高さは2m以上になり、このまま行けば庇につかえるのではと心配しましたが、高さはそこで止まりました。

その時には葉っぱはもう10cm位に大きくなり、ビッシリと茂っていました。



その頃に消毒をすれば良かったのでしょうが、ある日気付いた時にはほとんどの葉っぱの裏に緑色の小さなアブラ虫が沢山付いていました。

あわてて消毒をしましたが、アブラ虫に養分を吸い取られたのか、それ以降葉っぱに元気がなくなった様に思います。

それから、しばらくすると葉っぱの裏側に白い粉の様な物が噴き出しているのに気付きました。

インターネットで調べてみると、うどん粉病である事が判明しました。 

ほとんどの葉っぱの裏側が白くなっていましたので、そこまで症状が進んでいればもう手の施し様がない事も分かりました。


手の打ち様がないのでそのままにしていると葉っぱは次々に落ちていき、何百枚もあった葉っぱは短期間で残り10枚位になりました。

そんなクコを見る度に 『やっぱり、ダメだったかー』 と言う気落ちと、消毒等の手入れを怠った為にこの様な結果を招き、クコに対して 『申し訳ない、可愛そう!』 との思いがありました。



そんなある日、クコに近づいて良く見ると驚いた事に葉っぱが落ちた後から、春先に見覚えのある緑色の小さな新芽が続々と出て来ているのです。

クコの生命力の強さに改めて驚きました。 そして、今度はアブラ虫対策もうどん粉病対策も万全にしようと決意を新たにしました。

それで、まず他の植物から病気が移らない様にクコだけを他の植物と離して育てる事にしました。

その外にも小さなスプレーを買って来て、食用酢を水で30倍程度に薄めたものを2〜3日に1回程度、

そしてスミチオン液を水で千倍程度に薄めた液で1週間に1度位のペースで消毒しました。

そんな事を繰り返しながら大事に育てて行くと、又葉っぱが沢山出揃いました。








 ある朝、初めて開花した花を見つけた時はとても嬉しかったのを覚えています。 それが左写真です。















 つぼみが沢山あり、それらは毎日少しずつ開花して行きました。







花は殆んどが5弁ですが、6弁や7弁もありました。

この頃良く台風が来ていましたので、その度に植木鉢ごと室内に入れていました。

ミツバチが良く飛び回っていました。 そして小さな実がなりました。








 10月初めになると実が色づき始めました。















 上の写真から4日後です。















 10月末には実が大きくなって光が透き通る感じで、ルビーみたいに色が鮮やかになりました。















 左写真が11月24日の様子で、葉は枯れてかなり落ち、実は少しシワ枯れている物もあります。









写真撮影の後に実は全て採取され、水洗い・乾燥後に既存のクコ酒の中に追加投入されました。

今晩(2004年11月24日)はクコの豊作を祝って、ごましお家族による飲めや歌えの盛大な収穫祭が、夜を徹して行われる予定であります。

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